中小企業の無料IT活用術

02.01

中小企業の無料IT活用術

1.無料の経済について

ITは、我々のライフシーンだけでなく、企業の規模を問わずビジネスシーンへの浸透が進んでいる。ITの進展により、経済性の原則も大きな変化を迎えている。
経済性の原則について流れを確認すると、製造業は規模の経済を追い求め、大規模化により効率をいかにあげるかがポイントであった。一方で、ITではネットワークの経済が重要視される(※1)。
規模の経済では最適生産量があり、それを超えると逆に効率が低下することもある。
しかし、IT分野で製造される製品はソフトウェアやコンテンツといったデジタルデータであり、
一旦製造されると、利用ユーザが増えれば増えるほど、
データの複製や配布コストは限りなく0(ゼロ)に近づく。
また、ワープロソフトのデータのように、同一のソフトの利用者が多いほど、
データの流通が促進され、利用者側のメリットも高まる。
このネットワークの経済に加えて、近年では、無料の経済が注目を浴びている。
昔から、インターネット上に限らず、無料は多くのシーンで利用されてきた。
試供品を提供して、品質を確認してもらい有料の購入につなげるケースなどである。
そのため、従来の無料の経済では、ユーザはいつまでも無料を享受できるわけでない。
しかし、インターネット上のサービスには、いつまでも無料を享受できるものが多数存在する。
その多くは、検索サービスなど広告収入モデルである。
しかし無料を有料につなげている企業も増加している。
そのサービスを気に入ったユーザがプレミアム(割増料金)を払ってでも
さらに高機能のサービスを利用したい場合などである。
無料の経済は、インターネット上でも実世界でも同じように見えるが、大きな違いがある。
試供品を使った従来型のビジネスモデルでは、無料キャンペーンでサービス全体の5%を提供して、
その後95%を買ってもらうことを想定している。
しかし、無料の経済では、95%の顧客に対して無料を提供し、
5%の顧客にプレミアム版を購入してもらうことで成り立っている。
これはフリーミアムと呼ばれている。
※フリーミアムの定義は、以下の著作より引用・加筆したものである。
「FREE」クリス・アンダーソン著 小林弘人監修・解説  高橋則明訳 NHK出版

※フリーミアムはベンチャー・キャピタリストのフレッド・ウィルソンによる造語である
例えば、MixiやGREEといったソーシャルネットワークサービスでは、日記や掲示板機能や、多くのゲームが無料で提供されており、多くの利用者が無料でサービスを利用している。しかし、一部ゲームのアイテムが有料で提供されており、利用者が増加している。
このモデルを可能にしているのは、デジタルデータは複製費用が安価であり、そのため、無料版を多数配布して多くの潜在顧客に到達可能にできるのである。そして、その中の5%の顧客が有料版を利用してもらえば十分に収益を確保できるのである。
第2回のコラムでは、これらのサービスをうまく活用することで、コストを掛けずに販売促進につなげていたり、業務の効率化を実現したり事例を、実際のサービスを紹介していく。
(※1) 一方で、クラウド(インターネット上で提供されるサービスを、ユーザがサーバなどを意識せずに利用出来るサービスの提供形態)の普及により、IT業界に規模の経済が改めて押し寄せている現状もある。

2.中小企業の無料のIT活用プロモーション

インターネットの利用者が急増して以来、ITに無縁だった小売店や商店街でもホームページを作成して、プロモーションを実施したり、商品の販売を実施しているケースは多い。しかし、折角ホームページを作成しても、実際の店舗と同じで、集客をしないと自社のホームページにアクセスしてくれる顧客は増えない。いくら、良い商品が並んでいても来客がなければ売上は上がらないのはインターネットでも同様である。

その結果、集客がないまま、放置されゾンビのようになってしまったホームページも増えているのが現状である。ホームページのアクセス数を増やすには、以下の対策が必要である。

(1)SEO対策、検索結果の順位を上位になるように対策する
(2)魅力的なコンテンツや、顧客に有益な情報を発信する
(3)継続的にホームページを更新・運用する体制を整える

ここでは、(2)について、無料サービスを使ってできることを紹介する。特に、販売促進に役立つサービスを中心に紹介する。

①コマーシャライザー
商品紹介動画を無料で簡単に作成でき、宣伝広告に活用できる。

②ValuePress!
プレスリリースをマスコミ各社に無料で伝えてくれるサービスで、パブリシティに活用できる。

③販促ツール.com
携帯クーポンの発行やくじびきなど、集客やリピーターに確保に活用できる。

④POPit 書店や雑貨店などでの店員の手書き風のPOPをホームページ上の商品にも作成でき、宣伝広告に活用できる。
http://pop-it.jp/

⑤USTREAM 専門の映像機器が不要で、インターネットの映像中継が実施でき、イベント模様を伝えることで、集客に活用できる。
http://www.ustream.tv/

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①コマーシャライザー
http://cmizer.com/
自社の商品を説明するのに、動画を使いたい!でも、動画を作る技術はないし、お金を払って作ってもらうのもコストがかかるので避けたい。そういった場合に、既存の写真などを使って、動画を作成して自社のホームページやブログに掲載することが可能です。
あらかじめ、コマーシャライザーのサイトには、数多くの動画シナリオが用意されており、シナリオを選択して、商品の写真を5-10枚用意し、キャッチコピーを入れるだけ。
シナリオは、「高級編」、「映画編」、「お誕生日編」などが多数用意されており、商品にあったイメージを選択するだけで、プロのような動画を用意することができます。もちろん、無料です。
また、プレミアム会員になると、さらに利用出来るシナリオが増えて、表現力が増加します。
【利用シーン】
新しい商品(例えばケーキなど)を開発した。しかし、ホームページに写真を掲載するだけでは、イメージが伝わりづらい。そんな時に、複数の写真を組合せて、簡単に動画を作成し顧客にイメージを伝えます。

②ValuePress!
http://www.value-press.com/
新商品や新サービスを提供するときには、マスコミ向けにプレスリリースをお願いすることがあります。従来は電話やFAX、さらに人手を使ってマスコミ各社にプレスリリース文を流しており、到達確認に手間がかかり、実際に記事を閲覧されているのかも不安でした。ValuePress!では、インターネット上で記事を配信でき、さらに閲覧状況などを分析することも可能です。無料のコースの他に、サポートなどが充実した有料のサービスも
あります。
【利用シーン】
新しい商品(例えば環境に優しい新しい素材)を開発した。出来ればマスコミにも取り上げて欲しい。しかし、マスコミへのアクセスの方法がわからない、さらに様々なマスコミにアクセスする負荷が高い。そんな時、インターネットを利用して、手間をかけずに安価にプレスリリースの対応が可能になります。

③販促ツール.com
http://www.hansokutool.com/
実際の店舗でも福引やビンゴ大会、クイズ大会など、集客のイベントを実施することがあります。販促ツール.comではインターネット上でこれらのイベントを簡単に開催することができます。福引などで集客するととともに、クーポン券の発行でリピーターの確保にもつなげられるページです。もちろん、携帯電話からも利用できます。
広告が掲載されますが、もちろんこれも無料のサービスです。
【利用シーン】
飲食店で、BINGOを実施して、当選者には実際来店して商品を取りに来て欲しい。携帯電話に割引クーポンを配布して、再来店を促したい。このようなニーズに対応して、無料で販促を行ないたい場合に活用できます。

④POPit
http://pop-it.jp/
店舗内での販売促進(インストアプロモーション)は重要です。
そのため、実際の店舗でも、商品につけるポップの果たす役割は大きくなっています。ホームページ上でも様々な商品を紹介すると、注目や一押し商品が目立たなくなります。
POPitでは、自分のホームページやブログなどで商品紹介をする際に利用する様々なデザインのPOPが用意されています。画像を編集する技術は必要なく、キャッチコピーを入力するだけで、オリジナルのPOPを簡単に作成することが可能です。
完全に無料のサービスです。このサービスはAmazonなどの商品のアフィリエイトサービスに利用するものです。

⑤USTREAM
http://www.ustream.tv/
店内などでイベントを実施した模様を写真で掲載したホームページはよくあります。しかし、リアルタイムで掲載ができないため、終了したイベントの写真を掲載するだけでは、集客の効果が少なくなります。USTREAMは、インターネット上の無料の中継局です。
iPhoneや安価なWEBカメラとパソコンさえあれば、その場でインターネット上での中継が可能です。リアルタイムでイベントを中継することで、即時の集客につなげることも可能です。また、放送内容は録画して、後日インターネットで閲覧することも可能です。
完全に無料のサービスです。

まとめ
「無料(FREE)を活用するには?」というテーマで3回にわたって、無料(FREE)の概念や、無料で活用できるツールを紹介しました。こういったITツールの利用については、ITに苦手意識を持つ方は二の足を踏まれているケースが多いのではないでしょうか。しかし、一度利用してみると、意外に簡単に活用できることが実感できます(おまけに、ただである)。
もちろん、インターネット上のサービスは玉石混淆です。利用してみて役に立たないと思えば、すぐに利用をやめ、また新しい取り組みを行えばよいのです。実際に店舗内でもさまざまな販売促進策を試しては、成功したものは継続し、失敗したものは取りやめているはずです。実店舗のリアルな世界と同様に、ぜひトライ&エラーを繰り返しながら、FREEを活用して欲しいです。
また、何も利用するだけがFREEではありません。FREEを提供する側に立つことで、相乗効果も発揮できます。例えば新商品の新しい使い方や利用シーンを説明する情報も有用でFREEなコンテンツ提供です。
顧客や消費者は、「FREE(ただ)」が欲しくて、ホームページを訪れるのではありません。有用なコンテンツ(情報)が「FREE(ただ)」で活用できることに価値を見いだし、ホームページを訪れます。
これまで紹介してきたツールは、「FREE(ただ)」で、販売促進に活用できる有効なツールです。しかし、販売促進用のコマーシャルだけでは、顧客はそのホームページを訪れたことに満足しません。
役に立つ商品が購入できると共に、役に立つ情報が入手できてはじめて、ホームページに対する満足度が上がるのです。

中小企業診断士 村上知也(mpaメンバー)

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